4月6日(土)。Zepp Nagoya。

客席の灯りが消え、アコースティックギター1本を抱えてステージにあらわれた藤巻亮太は、いつもとは違う空気をまとっていた。

 

藤巻自身が「新たな挑戦」と語る弾き語り全国ツアーの初日。藤巻はその1曲目に、4月3日にリリースしたばかりのセルフカバーアルバム『RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010』にも収められている、レミオロメンの初期の楽曲を選んだ(ここでは、あえて曲名は伏せる)。

 

ギターのアルペジオから始まるイントロが印象的な曲だが、今回のアレンジでは、あえてボーカルを曲の初めに置いている。藤巻の楽曲の大きな魅力のひとつである、繊細で叙情的な歌詞がダイレクトに入ってくるアレンジだ。

 

最初のフレーズを、伸びやかな歌声で藤巻が歌い出したとき、これまでの彼にはなかった迫力に、息をのむ気配がさざ波のように客席に広がった。MCで見せる人懐っこい笑顔とは対照的な、言葉が重く腹の底に響いてくるような弾き語り。

 

「藤巻亮太の、何かが変わった」
レミオロメン時代からのファンも、若い世代のファンも、多くがそんな印象を抱いたのではないだろうか。

 

 

ソロデビューから7年。藤巻亮太が歩んできた道のりは、決して平たんではなかった。ソロ1st アルバム『オオカミ青年』をリリースした後には、これから歌っていくべき音楽とは何かを自問自答した日々があった。世界中を旅し、写真を撮り、学び、語り、模索しながら歌い続けてきた。

 

昨年には事務所からの独立を発表。自身が主催する音楽フェス「Mt.FUJIMAKI」を立ち上げ、自らアーティストに電話をかけて出演依頼をし、ふるさと山梨を回って協力を求めた。

 

そんな藤巻が、最近よく口にする言葉がある。
「変わっていくこと。変わらないこと。その両方と向き合いながら、歌い続けていきたい」。

 

 

39歳になる藤巻が、おもに20代のころ作曲したレミオロメン時代の曲を、アコースティックアレンジでカバーしたアルバム『RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010』。レコーディングの過程で、曲を作ったころの記憶がよみがえり、時を経た今だからこそ気づくこと、新たな発見がたくさんあったという。

 

「これまでいただいた愛情を、次の世代につなげていきたい。今度は自分の番」と語るその表情はすがすがしく、もはや迷いは感じられない。

 

セルフカバーアルバムをひっさげ、ギターを相棒に全国を回ることも、変化をおそれず、同時に変わらない情熱を大切に抱いていこうという決意のあらわれなのだろう。

 

 

今回のツアーは、Zepp Nagoya、Zepp Osaka Bayside、Zepp Fukuoka、そしてZepp Tokyoの4公演のみ、ドラムとベースを迎えた3ピースの特別編成になっている。

 

この日も弾き語りパートの後は、河村吉宏(Dr)と、なかむらしょーこ(Ba)をステージに呼び込み、アルバム収録曲と、ソロの楽曲を交えたいろどり豊かなセットリストで会場を魅了。本編のラストでは、力強いMCと共に、ふるさとへの想いを込めたソロの最新曲を披露した。以前からの持ち味である美しい情景描写に、包み込むようなスケール感が加わった大人のメロディは、ソロ・藤巻亮太の新たなスタンダードナンバーとして、世代を超えて愛されていく可能性を感じさせる。

 

今回のツアーは、サブタイトルを ”In the beginning” と銘打っている。ソロアーティスト、藤巻亮太の存在感を、新旧のファンに鮮烈に印象付ける「始まり」となったツアー初日。終演後の会場で、レミオロメン時代から藤巻をよく知る関係者と偶然顔を合わせた。「歌はもちろんだけど、MCも変わったよね」という彼のつぶやきが印象に残った。

 

弾き語りツアーは6月初旬までおよそ2ヶ月をかけ、Zepp4公演を含む全国19ヶ所を回っていく。藤巻が「言葉」とメロディに込めた真摯なメッセージを、ぜひライブ会場で受け取ってほしい。

 

(特別寄稿)